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3 横浜市における端末選定の考え方

文部科学省が示した3つの OS の端末モデルの中から、本市において導入する端末を選定することになりますが、その際には、機能、費用などハードウエア的視点だけではなく、教育的視点や教育現場の声など、様々な視点を考慮し、検討する必要があります。
そこで、本市では文部科学省が提示した端末モデルについて、
(1) ハードウエア的視点(機能、管理、費用)
(2) 教育的視点(情報活用能力の育成、ICT を効果的に活用した授業の実現、特別支援教育における教育の情報化、遠隔教育の推進)
(3) 教育現場・有識者等の意見
の3点から検討を行いました。
(詳細は「横浜市における GIGA スクール構想の方向性(令和2年6月公表)」別紙2~4参照)



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(1)ハードウエア的視点
本市では、文部科学省の提示した1台あたり 4.5 万円のモデルで整備を行います。
将来的な更新時(4~5年後)に予測される費用は、様々な要素(BYOD(※7)の浸透状況や ICT 環境の変化、教育的視点から求める機能)があり、正確な比較はできないものの、現時点では「Chrome 端末」「iPad 端末」「Windows 端末」とも同程度でした (※8)。
機能面でも、総体として大きな差は見られませんでしたが、管理面で、OS アップデート時の使用可否、OS サポート期限、端末の入替えのしやすさなどに違いが見られました。

(2)教育的視点
教育的視点では、文部科学省「教育の情報化に関する手引」(令和2年6月)を踏まえるとともに、横浜市の情報教育の推進に向けて重要である「特別支援教育における教育の情報化」と「遠隔教育の推進」の視点を加えました。
本市では、文部科学省が示す「学習指導要領」を踏まえて策定した「横浜市立学校カリキュラム・マネジメント要領 (※9)」に基づき、情報活用能力の育成を進めています。
情報活用能力は、「横浜モデル 情報活用能力 体系表(※10)」に示されている通り、学校種や児童生徒の発達段階を踏まえて、体系的に育成を図ります。
また、ICT を活用した情報活用能力の育成については、特定の教科や単元だけで行うのではなく、発達段階を踏まえ各教科等の時間において ICT を適切に取り入れながら育むものとしています。
そこで、育成する資質・能力や具体的な活用場面を想定しながら、評価の視点を学校種ごとに設定しました。

ア 小学校
小学校では、情報活用の技能として、低学年から「目的に応じて、写真や動画を編集することができる」能力を育むことが求められています。
その際、端末を校外に持ち出し、観察や体験の記録などでカメラ機能を活用することが想定されます。
また、「コンピュータによる文字入力、変換ができる」ことが全学年にわたって求められますが、低学年では発達段階や教科等の関連性を考慮し、画面に直接触れながら行う入力や、平仮名やカタカナの文字入力などで入力操作に慣れることが大切です。
 

※7… Bring Your Own Device の略。個人所有の端末を学校の授業で使うこと。
※8… 参考価格(本市調べ)は国の GIGA スクール構想で示された端末と同条件で比較。Chrome 端末:約 5.5 万円/台、iPad 端末:約 5.7 万円/台(非純正カバーキーボード含む)、Windows 端末:約 5.5 万円/台。
※9… 横浜市立学校の各学校や小中一貫教育推進ブロックが、教育課程を自主的・自立的に編成・実施・評価・改善していく際の拠り所となるもの。
※10… 各学校種で情報活用能力を「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力の三つの柱で整理し、育成を目指すための目安とするもの。「横浜市における GIGA スクール構想の方向性(令和2年6月公表)」別紙1参照。




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中学年以降になると、画面キーボードや物理キーボード(※11)などを活用し、ローマ字入力による文字入力・変換ができる技能を高めていきます。
プログラミング教育は、低学年からインターネット上のコンテンツなどを利用しながら行うプログラミングの体験が想定されます。
一方で、様々な教科・場面で扱われることから、インターネットにつながらない場所であっても利用できることも大切です。
高学年では、明るさを感知したり、LED を光らせたりするようなセンサー機能の教材(※12)等を用いることが教科書に例示されており、多くの学校での活用が想定されます。
今後、デジタル教科書を利用する場合は、ブラウザでの閲覧だけでなく、インターネットに接続しなくても利用できるよう、端末にインストールすることも可能であることが望ましいと考えます。
個々のニーズに合わせたサポート機能(アクセシビリティ機能(※13))が求められており、こうした機能は誰一人取り残すことのない教育を進める上でとても有効です。
学びの保障という観点では、緊急事態など様々な理由で学校に通えない場合の手段として、持ち帰った端末を家庭の Wi-Fi に容易に接続できることがとても重要です。
教員にとっては、これまでの教育現場での端末活用の実績やノウハウをいかすことで、授業改善を図ることが可能になると考えられます。

イ 中学校
中学校では、情報活用の技能として、小学校で身に付けた文字入力の技能等を踏まえ、「自分の考えや意見など、ひとまとまりの文章を入力できる」能力や、「目的に応じて表やグラフを加工することができる」能力が求められます。
また、これからの教育課題への対応として挙げられる複数のインターネット上の情報をマルチウィンドウ機能(※14)により表示し、信ぴょう性を判断する力を養うことも求められており、複数の情報を並べて表示できる機能を有することが重要と考えます。
プログラミング教育では、小学校での体験を踏まえ、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング(※15)が求められます。

 
※11… 物理的に押して数字や文字を入力するボタンを配置したキーボード。簡易キーボードも含む。
※12… 無線通信を使って出入力できるセンサーのついたプログラミング用の教材。
※13… 児童生徒個々の状態に合わせて視覚、聴覚、身体機能、学習や読み書き等をサポートする機能。
※14… 複数の画面を同時に表示できる機能。
※15… 具体的には「互いにコメントなどを送受信できる簡易なチャット」や「複数人でコミュニケーションできるデジタル筆談ボード」などの学習活動。



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さらに、「計測・制御(※16)に関するプログラミングを行うためには、センサー機能の教材等と OS が対応していることが必要となります。
今後、デジタル教科書を利用する場合は、ブラウザでの閲覧だけでなく、インターネットに接続しなくても利用できるよう、端末にインストールすることも可能であることが望ましいと考えます。
個々のニーズに合わせたサポート機能(アクセシビリティ機能 )が求められており、こうした機能は誰一人取り残すことのない教育を進める上でとても有効です。
学びの保障という観点では、緊急事態など様々な理由で学校に通えない場合の手段として、持ち帰った端末を家庭の Wi-Fi に容易に接続できることがとても重要です。
さらに、既存のコンピュータ教室にある端末の利用を継続しながら、義務教育終了時までに異なる OS の端末に触れる環境を整える視点も必要だと考えられます。

ウ 高等学校
高等学校では、各学科に共通する教科「情報科(※17)でプログラミング、データベースの基礎等を全員が学び、各教科でも情報活用能力の育成とそれを活かした学習を進め、主体的・対話的で深い学びの実現を図るなど、ICT 機器を駆使した発展的な学びが期待されます。
なお、1人1アカウントを配付し、個人所有の端末等を持ち込む BYOD を基本としながら、端末を持っていない生徒へは教室で貸し出すなどの対応を行います。

エ 特別支援学校
特別支援学校では、情報活用の技能の育成にあたり、個人の障害や発達段階により、テキストデータだけでなく写真や動画等の情報を利用することが求められています。
本人の行動などを記録し、後から客観的に振り返るような活用など、写真や映像の撮影など、容易に利用できることが特に大切な要素となります。また、特に高等部の生徒においては、卒業後の進路や将来の社会参加を見据えて、ICT 機器の扱いに慣れ、それらを活用できること、さらには様々な情報を適切に活用することが重要です。
個々のニーズや特別に配慮を要する児童生徒等の利用の観点では、個々の児童生徒の学習上、生活上の様々な困難さに対して、それまでの学習の積み重ねや、発達段階や障害の状況等を十分踏まえた上で、ICT を活用した指導や支援をすることが求められます。
そのため、学習アプリや支援アプリの十分な供給状況や機能、個々の児童生徒の状況に合わせた端末設定ができることが必要となります。
さらに、学習効果をより一層上げるために、1人1台の端末を確保し、端末に備わったアクセシビリティ機能を、個々の障害等の状況に合わせて適切に設定したまま日常的に活用することができる体制を整えることも重要です。


※16… ロボットや制御システムを正しく動かすために、計測・制御の仕組みを理解し、問題点を修正し課題解決する。
※17… 高等学校では令和4年度から実施される新学習指導要領で、プログラミングやデータ活用などを扱う「情報Ⅰ」が必履修科目となる。




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具体的には、知的障害がある場合には使いやすい意思表示アプリやスケジュール管理アプリ、聴覚障害がある場合には他者の音声を文字化して画面表示し、会話を支援するアプリ等が数多く存在するため、それらを児童生徒が活用できるように適切に選択していきます。
日常的に活用するための機能については、視覚障害がある場合には一人ひとりの視覚の活用状況に応じて、画面の拡大倍率や、コントラスト、文字の太さ等を設定します。
肢体不自由がある場合は、複数の指で行う必要のある操作を簡略化でき、音声入力や視線入力で文書を入力することもできます。
発達障害のある場合には、画面上の要素を少なくし、他のアプリが起動しないようにするなどして、集中した学習を促すことが可能です。
さらに、長期療養中で入院している児童生徒へも、1人1台の端末と、インターネット回線が確保できれば、病弱特別支援学校からの支援や、入院する前のクラスとの日常的なコミュニケーションが期待できます。
児童生徒が学習場面に加え、将来的に家庭や地域社会においてもネットワーク接続の有無にかかわらず、様々な生活場面で端末を活用していくことで、自己決定の機会を重ね、生きる力を養い、誰もが生き生きと活躍できる共生社会の実現につながるものと考えます。
なお、高等部については1人1アカウントを配付し、個人所有の端末等を持ち込む、BYOD を基本としながら、端末を持っていない生徒へは教室で貸し出すなどの対応を行います。


(3)教育現場・有識者等の意見

ア 教育現場の意見等
令和元年 12 月から令和2年1月にかけて、「今後1人1台端末環境に向けてどのパソコンの導入がふさわしいと思うか」という質問で、小・中学校の教員に対し、アンケートを実施(※18)し、それぞれの端末についての良さや課題等様々な意見を集めました。

イ 有識者等の意見
端末選定にあたり、それぞれの端末の特徴や教育現場での状況を把握するために、令和2年3月から4月に、情報教育や ICT 環境整備に造詣の深い大学等の研究者や、市の小・中学校校長(情報教育の研究会(※19)会長)等による懇談会を開催し、端末の機能や教育現場での利用などについて意見を集めました。
 

※18… 令和元年 12 月から令和2年1月にかけて、小・中学校の全教員を対象に実施。
※19… 横浜市小学校情報教育研究部会、横浜市中学校視聴覚・情報教育研究部会を指し、ICT や情報教育について研究を深めるための横浜市内の小・中学校の教員で組織された組織。教育委員会事務局と連携しながら授業研究や研修を行っている。




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(4)端末選定について

以上の(1)から(3)を踏まえ、学校種ごとに望ましいと考えられる端末は、次の通りとなります。
なお、端末の耐用年数は概ね4、5年程度であり、今後も更新が必要となります。
その際には、学び・社会状況の変化(デジタル教科書、遠隔教育、通信環境、BYOD等)に応じて、適宜、時代にふさわしいものに見直していくことが重要です。

ア 小学校
低・中学年が活用することを考えると、持ち運びやすさや、写真や動画の編集のしやすさ、起動の速さ、タッチパネルなどの操作性の良さは大切なポイントです。
文字入力、変換に関しては、小学校段階では簡易キーボードであっても、文字入力に関する技能を身に付ける上では大きな差異はないと判断しました。
小学校は、令和2年度から新学習指導要領が実施されましたが、その際に位置付けられたプログラミング教育にも、教科書で取り上げられたセンサー機能の教材が対応していることは、とても重要と考えます。
これからの教育課題への対応については、いずれの端末ともクラウドサービスが利用可能であることから、アプリや外部入出力機器の特徴はあったとしても大きな差はないと考えます。
義務教育の初期ということもあり、個々のニーズに合わせやすい特別支援教育の視点が求められます。
教育現場からは、直感的で誰にでも扱いやすいことが必要との意見がありました。
児童の発達段階に応じた教育現場での活用が期待できるとの意見等から、「iPad端末」が望ましいと考えます。

イ 中学校
中学校ではタイピングやマルチウィンドウ機能の活用場面が増えることから、「Chrome 端末」と「Windows 端末」が機能面において望ましいと考えます。
教育現場からは、WEB 検索のしやすさや起動の速さを求める意見も強く、加えて、クラウドベースで運用できる端末への期待も少なくありません。
中学校のプログラミング教育では、計測・制御、双方向性のあるコンテンツについては、いずれの端末とも差はありませんでした。
これからは、緊急時等に家庭へ持ち帰って学びを継続させることも想定され、家庭の Wi-Fi に接続しやすいことも重要と考えます。
有識者等からは、中学校内のコンピュータ教室にある「Windows 端末」が引き続き活用が可能であり、義務教育課程修了時までに異なる OS の端末を使う経験をさせたほうが良いという意見がありました。以上のことから、「Chrome 端末」が望ましいと考えます。
なお、一般学級に在籍している発達障害がある生徒や個別支援学級在籍の生徒も、「Chrome 端末」が望ましいと考えます。




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一方で、個々の生徒により状態が異なるため、必要な生徒に対しては学校に配当されている「iPad 端末」や「Windows端末」を使用したり、「Chrome 端末」と併用したりできることが適切であると考えます。

ウ 高等学校
高等学校では、BYOD が前提ですが、端末を持っていない生徒へは貸出などの対応を行う予定です。
この際、中学校からの連続性を踏まえ、「Chrome 端末」が望ましいと考えます。

エ 特別支援学校
小・中学部は、児童生徒に合わせた柔軟なアクセシビリティ機能が内蔵されていることや、これまでも取組事例が多数あり、今後更に活用の広がりが期待できることなどから、「iPad 端末」が望ましいと考えます。
高等部は BYOD が前提ですが、端末を持っていない生徒へは貸出などの対応を行う予定です。
この際の端末選定に関しては、個々の障害状況や卒業後の進路等を勘案して、引き続き検討していきます。



【参考4】特別支援学校で iPad 端末を使用している事例

〇視覚障害特別支援学校
国の PDF 版拡大教科書の研究に初期から協力し、実践を積み重ねてきており、市立小・中学校の弱視個別級や弱視通級に対して PDF 版拡大教科書について情報提供もしています。

〇聴覚障害特別支援学校
児童生徒が手話をビデオカメラ機能で撮影し、見せあうことで、技術向上等につなげています。
中・高等部では、生徒が発表時にパワーポイントで資料作成し、視覚情報を補う取組を行っています。

〇肢体不自由特別支援学校
リアルタイムで撮影した映像に字幕等を加えるアプリを開発し、体験しづらい角度からの
映像を使用した授業実践を行っている例のほか、視線入力装置を使用した学習も積み重ねています。

〇知的障害特別支援学校
教職員が授業や行事の様子をビデオカメラ機能で撮影し、児童生徒に自分の様子を見せることで、活動の振り返りを行い、自己評価を促す指導や、支援アプリを用いてスケジュール等を管理する例もあります。

〇病弱特別支援学校
ベッドサイドと院内学級間でコミュニケーションをとるために、テレプレゼンスロボット(※20)を操作する端末としてタブレット機器を使用したり、本校と各院内学級を TV 会議システムでつなぎ、集会や授業を行ったりしています。
 

※20…発言や、簡単な身振りや手ぶりができるカメラ付きロボット。自分の分身として離れた場所から操作し、人と対話することができる。参考 URL https://orihime.orylab.com/